黄体機能不全と妊活|高温期が短い原因は、低温期にあります
黄体機能不全と言われたとき、高温期そのものを何とかしようとしても答えは出ません。黄体は排卵後に新しくできる臓器ではなく、排卵した卵胞そのものが変化したものだからです。育ちの足りない卵胞からは、力の弱い黄体しかできません。手を付けるのは低温期です。
高温期が短いと言われて、不安になるのは自然なことです
高温期が短いですね。黄体機能不全かもしれません。婦人科でそう言われて、基礎体温表を手に相談に来られる方がよくいらっしゃいます。
毎朝、目が覚めてすぐ体温を測り、一本の点を書き足す。その点が昨日より低いだけで、一日の気持ちが決まってしまう。そういう状態が何ヶ月も続いている方は少なくありません。
不安になるのは自然なことです。ただ、その不安が自己診断に向かうと、かえって遠回りになります。
黄体機能不全とは何か
排卵したあと、卵胞は黄体という組織に変化し、プロゲステロンを分泌します。黄体ホルモンとも呼ばれます。このホルモンが子宮内膜を着床に適した状態に保ち、体温を上げます。
黄体のはたらきが十分でないと、内膜が育ちきらず、着床しても続きにくくなります。これが黄体機能不全と呼ばれる状態です。
先にお伝えしておきたいことがあります。黄体機能不全は、検査ひとつで白黒がつく病気ではありません。医療者向けの診療情報データベースである今日の臨床サポートの黄体機能不全の項では、日本産科婦人科学会の産婦人科診療ガイドライン婦人科外来編2026と、ASRMやESHREといった海外主要学会の見解を踏まえ、基礎体温と血中プロゲステロン値と子宮内膜日付診を不妊の方に一律に行っても臨床的な有用性は乏しく、妊娠できる方とそうでない方を確実に区別することは難しいとされています。
数値ひとつで、妊娠できるかどうかが決まるわけではありません。今月のグラフが短かったからといって、落ち込む材料として受け取る必要はないということです。
基礎体温にあらわれる5つのサイン
- 高温期が10日未満で終わってしまう
- 低温期と高温期の差が0.3℃に満たない
- 高温期の途中で体温がガクッと下がる
- 高温期に入るまでに何日もかかる
- 生理予定日の前から少量の出血が続く
高温期の途中で下がる形が続く方は高温期に体温が下がる・ガタガタ不安定なタイプを、低温期のほうが長い方は低温期が長いタイプもあわせてご覧ください。グラフの形から入りたい方は基礎体温タイプ別ガイドが入口になります。
卵巣の側の問題と、子宮内膜の側の問題
黄体機能不全という言葉は、中身の違う二つの状態をまとめて指しています。
ひとつは、黄体からのプロゲステロンの分泌そのものが足りない状態です。卵巣の側の問題にあたります。もうひとつは、分泌量は足りているのに子宮内膜の側がそのホルモンにうまく反応できていない状態です。
同じ病名でも、手を付ける場所が変わります。子宮内膜の側については次の章で、卵巣の側についてはその次の章で扱います。
病院で確認できる検査
高温期の中頃に血中プロゲステロンを測る方法が一般的です。おおむね10ng/mL以上が目安とされます。
このほか、プロラクチンと甲状腺ホルモンの値も確認しておきたい項目です。高プロラクチン血症や甲状腺機能の異常があると、排卵と黄体のはたらきの両方に影響します。この場合はまず、その病気の治療が優先されます。
貯蔵鉄であるフェリチンも見ておきたい項目です。鉄はホルモンをつくる過程にも、酸素を運ぶ働きにも関わります。ヘモグロビンが正常でもフェリチンだけが低い方は珍しくなく、フェリチンが低いときの食事と鉄の補い方にまとめています。
そして、低温期のあいだに卵胞がどう育っているかです。超音波で卵胞の大きさを見てもらえているかどうか。ここがこの記事の要になります。
基準値の見方には条件がつきます
10ng/mLという数字は、医療機関によって基準が異なります。年齢や、すでに受けている治療の内容によっても判断は変わります。数値だけを取り出して比べるものではありません。
プロゲステロンは足りているのに、高温期が短いとき
検査ではプロゲステロンが10を超えていた。それなのに高温期は9日しかない。こういう方がいらっしゃいます。子宮内膜の側の問題を考えるのは、こういうときです。
私は次の順で確認していきます。
まず、子宮内膜の側の反応を疑う
ホルモンを手紙にたとえると、子宮内膜には受け取るための郵便受けがあります。受容体、あるいはレセプターと呼ばれるものです。手紙が十分に届いていても、郵便受けのほうが働かなければ、内膜は反応しません。
もうひとつ、子宮内の血流が不足している場合です。血流が足りないと内膜の成熟が続かず、早めにはがれ落ちてしまいます。内膜が厚くならない、着床が続かないという悩みは着床と子宮内膜の記事でも扱っています。
次に、基礎体温の測り方を確認する
基礎体温は繊細です。睡眠が4時間を切った朝、途中でトイレに起きた朝、起床時刻が普段と2時間ずれた朝。こうした条件だけでグラフは乱れます。
1周期や2周期で判断せず、3周期ほど並べて傾向を見てください。
採血のタイミングがずれていた可能性
プロゲステロンは1日のなかでも激しく変動します。波のように分泌されるため、採血したその瞬間だけ、たまたま10を超えていたということもあり得ます。逆に、一度の採血で低かったからといって、その周期の黄体が悪かったと決まるわけでもありません。
卵巣の側の答えは、低温期にあります
分泌そのものが足りない場合、つまり卵巣の側の問題は、高温期を見ていても解けません。
黄体は排卵後に新しくできる臓器ではないからです。排卵した後の卵胞そのものが変化して黄体になります。しっかり育った卵胞からはしっかりした黄体ができ、育ちが足りない卵胞からは力の弱い黄体しかできません。
高温期が短い、上がりきらないという現象を高温期の問題として見ている限り、堂々巡りになります。低温期に卵胞がどう育っているか、その材料が足りているか。卵胞が育つ土台の話は卵子の質の記事に、排卵そのものがスムーズでない場合は排卵障害の記事に書いています。
高温期だけ何とかしたいというご相談をよくいただきますが、私が低温期の過ごし方と食事のお話から始めるのは、このためです。
西岡の考え|黄体を補うことより、排卵の質を上げること
ここから先は、薬剤師である私の個人的な考えです。医学的に確立された見解ではありません。
黄体ホルモンは、排卵後の殻から分泌されます。その殻は卵胞そのものですから、良い卵には良い殻がもれなく付いてくると考えています。だとすれば、排卵の質が上がれば黄体機能不全は自然に整いやすくなるのではないかと考えています。
そう考えると、排卵後の黄体補充だけに目を向けるよりも、その前の低温期の状態にも目を向ける意味があるのではないか。私はそう思っています。
ただし、これは私個人の考えです。実際の治療方針は、あなたの検査結果と経過を見ている主治医と相談して決めるものです。この記事を読んで、いま受けている治療を自己判断で中断したり、処方された薬をやめたりしないでください。
薬を使っている周期の基礎体温は、大きく見る
すでに黄体補充を始めている方から、薬を飲んでいるのに体温が上がらない、というご相談をよくいただきます。
デュファストンには、基礎体温を直接上昇させる作用がほとんどありません。飲んでいても体温が上がらないことは、薬が効いていないという意味ではないのです。
一方、プラノバールやhCG注射を使っている周期は、薬のホルモン作用で体温が人工的に動きます。この周期の基礎体温から、自然な排卵や黄体の状態を正確に読み取ることは難しくなります。
ですから、薬を使っている周期は1日ごとの細かい変動を追うのではなく、薬の効果による全体的な推移として大まかに見てください。
中医学から見た黄体機能不全
西岡の考え
ここから先は中医学の理論にもとづく身体の捉え方であり、上でご説明した黄体機能不全の医学的な説明とは別の視点です。漢方が診断や治療に置き換わるものではありません。婦人科での診断・治療を前提に、体質という角度から何ができるかをお伝えするものとしてお読みください。
ここからは中医学の捉え方です。西洋医学で証明された仕組みの話ではありません。
中医学に黄体機能不全という言葉はありません。周期は陰陽のリズムで見ます。低温期は陰を養う時期、排卵を境に陽へ転じ、高温期は温める力が優位になる時期です。
腎陽は、体を温める力の源にあたります。足腰が冷える、朝がつらい、夜間に目が覚める。高温期が上がりきらない方の土台によく見られます。
脾は胃腸のはたらきを指し、食べたものから気血をつくる役割を担います。ここが弱いと、良い食事をしても体に取り込めません。
肝は気のめぐりに関わります。緊張が続くと滞り、高温期の後半に体温が下がる形になりやすくなります。今回こそはという気持ちそのものが影響していることもあります。
めぐりが滞って届かない状態を瘀血と呼びます。経血の塊や強い月経痛として出ます。
体質の見分け方
| 体質 | 基礎体温のあらわれ方 | よく見られるサイン | 確認すること | 相談で確認すること |
|---|---|---|---|---|
| 腎陽虚 | 高温期が上がりきらない | 足腰の冷え、夜間の目覚め、月経が遅れがち | 冷える部位はどこか | 冷えがいつから始まったか |
| 脾虚と気血不足 | 全体に体温が低く、差が小さい | 食後に眠くなる、軟便、顔色が優れない | 便の状態と食事の量 | 1日に何をどれだけ食べているか |
| 肝鬱 | 高温期の途中でガクッと下がる | 月経前の胸の張り、ため息、寝つきの悪さ | 睡眠と予定の詰まり具合 | ストレスの中身と、いつからか |
| 瘀血 | 高温期はあるが不安定 | 強い月経痛、経血の塊、固定した肩こり | 舌の色、頭痛の有無 | 月経痛の程度と経過 |
この表は目安です。ご自分で体質を判定して漢方薬を選ばないでください。複数の体質が重なっていることがほとんどで、そのときは何から手を付けるかで選ぶものが変わります。
相談の現場で、よく見られること
基礎体温表をお持ちになった方に、私はまず低温期を見ます。高温期のことで来られたのに、と不思議がられることもあるのですが、答えはたいてい低温期に書いてあります。
低温期の見直しで最初に手を付けることが多いのは冷えです。どこがいつから冷えるのかを問診で確認したうえで決めています。同じ冷えでも、足首だけの方と、腰から下全体の方では組み立てが変わります。
もうひとつ、避けていただきたいことがあります。基礎体温のわずかな変動に過剰に不安になり、自己診断してしまうことです。前日より0.1℃低い、それだけで今周期は駄目だと判断してしまう。その落ち込みが、次の周期に影響します。
記録は自分を採点するためのものではありません。うまくいかなかった月は、いまここが足りていないと教えてくれた月だと考えてください。
低温期からの食養生
食べ方として意識したいことが4つあります。
- 朝食を抜かない。1日の代謝と体温のリズムをつくる起点です
- たんぱく質を3食に分ける。卵胞と内膜の材料になります
- 脂質を極端に減らさない。体内でホルモンをつくる材料にコレステロールが使われるためで、脂質を足せば高温期が整うという話ではありません
- 鉄を意識する。赤身肉やレバー、あさりを、野菜や果物と一緒に
朝は卵かけご飯と味噌汁。昼は魚か肉の定食。夜は具だくさんの汁物に温野菜を添える。この程度で十分です。忙しい方は、ゆで卵を数個作り置きしておくだけでも違います。
生活の側では、次の3つを見直してください。
- 下半身を冷やさない。腹巻き、靴下、湯船。高温期だけでなく低温期からです
- 睡眠の時刻をそろえる。長さより、寝る時間がぶれないことのほうが効きます
- 高温期に無理をしない。激しい運動や過労は、この時期には向きません
サプリメントを複数併用している方は、成分が重なっていないか確認してください。鉄やビタミンAは摂りすぎが問題になることがあります。
検討されることのある漢方薬
体質によって、次のようなものが候補にあがります。
冷えとむくみがあり、月経量が少なめで疲れやすい方には当帰芍薬散。月経前のイライラや胸の張りが強く、高温期の途中で体温が下がる方には加味逍遙散。月経痛が強く経血に塊が出る方には桂枝茯苓丸。疲れやすく食が細い方には十全大補湯。こうした処方が検討の対象になります。
同じ高温期が短いという状態でも、選ぶものはまったく異なります。自己判断が難しいのは、複数の体質が重なっていることがほとんどで、どれを先に手当てするかで組み立てが変わるからです。
妊娠中や授乳中の方、持病のある方、病院の薬やサプリメントを飲んでいる方は、漢方薬を足す前に必ず医師と薬剤師に伝えてください。
受診前・漢方相談前に確認したいこと
- 基礎体温表を3周期分
- 高温期の日数と、低温期との温度差
- 血中プロゲステロンの値と、それをいつ測ったか
- プロラクチンと甲状腺の検査を受けたか
- フェリチンの値
- 低温期に卵胞の大きさを見てもらっているか
- 服用中の薬とサプリメントの名前
- 月経の量、痛み、塊の有無
こんなときは早めに医療機関へ
- 高温期が10日未満の周期が3周期以上続いている
- 月経周期が24日以下、または39日以上
- 月経以外の出血が続く
- 化学流産や早期流産を繰り返している
- 乳汁が出る
- 1年以上妊娠に至っていない。35歳以上の方は半年を目安に
よくある誤解と、実際の考え方
| よくある誤解 | 実際の考え方 |
|---|---|
| 高温期を直接伸ばせばよい | 低温期に卵胞が育てば、結果として高温期は整ってきます |
| 薬で体温が上がれば黄体が育った証拠 | 薬のホルモン作用で動いているだけのこともあります |
| 高温期が10日ちょうどなら問題なし | 日数だけで線を引けるものではありません |
| 病院か漢方かを選ばなければならない | 並行して取り組むことも珍しくありません |
まとめ|今日からできること
高温期が短いとき、手を付けるのは低温期です。黄体は卵胞が変化したものだからです。
プロゲステロンが足りていても高温期が短いことはあります。子宮内膜の側の反応、基礎体温の測り方、採血のタイミングの順に確かめてください。
薬を使っている周期の基礎体温は、細かく読まずに全体の推移で見てください。
今日からできることは、朝食を抜かないことと、下半身を冷やさないことの2つです。次の受診では、低温期に卵胞の大きさを見てもらえるか聞いてみてください。
検査結果だけでなく、睡眠や胃腸、冷え、月経も含めて整理したい方は、漢方相談も選択肢の一つです。基礎体温表と血液検査の結果をお持ちいただければ、どこから手を付けるとよいかご一緒に整理できます。
著者 西岡 敬三
漢方の葵堂薬局 代表/薬剤師
西洋医学的な検査データも踏まえて相談を行う漢方専門薬剤師。中医学、漢方、食養生に加え、食べたもので身体ができているをモットーに栄養学の視点も取り入れている。NLPマスタープラクティショナー認定。
漢方・中医学・食養生の視点から、一人ひとりの体質や生活背景に合わせた養生と漢方相談を行っている。
著書
『心もカラダもラクになる血流の整え方』
『病院では教えてくれない西岡式妊活で妊娠まっしぐら』
更新日 2026年8月12日
よくある質問
Q高温期が短くなる原因は何ですか
Q高温期が10日ちょうどなら問題ありませんか
Qプロゲステロンが10以上あったのに高温期が短いのはなぜですか
Qデュファストンを飲んでいるのに体温が上がりません
Q高温期を長くする方法はありますか
Qどのくらいで変化しますか
Q病院の治療と漢方は併用できますか
参考資料
今日の臨床サポート「黄体機能不全」エルゼビア・ジャパン、医療者向け診療情報データベース。https://clinicalsup.jp/jpoc/contentpage.aspx?diseaseid=1754 2026年8月12日確認
ホルモン値の読み方はLH・E2の読み方を、移植を控えている方は移植前に整えておきたいことをあわせてご覧ください。
最終確認:2026年9月/監修:薬剤師 西岡敬三