黄体機能不全と妊活|高温期が短い・不安定なときに見るべきところ

「高温期が短いですね」「黄体機能不全かもしれません」。婦人科でそう言われて、基礎体温表を手に相談に来られる方がよくいらっしゃいます。

高温期は、妊娠が成立するかどうかを左右する大事な期間です。ただ、この時期だけを見ていても解決しないことが多い。理由は後で述べますが、高温期の問題は、実はその前の低温期にできていることがほとんどだからです。

黄体機能不全とは

排卵したあと、卵胞は「黄体」という組織に変化し、プロゲステロン(黄体ホルモン)を分泌します。このホルモンが子宮内膜をふかふかに保ち、体温を上げ、受精卵が着床できる状態をつくります。

黄体のはたらきが十分でないと、内膜が育ちきらず、着床しても続きにくくなります。これが黄体機能不全と呼ばれる状態です。

基礎体温にあらわれるサイン

  • 高温期が10日未満で終わってしまう
  • 低温期と高温期の差が0.3℃に満たない
  • 高温期の途中で体温がガクッと下がる
  • 高温期に入るまでに何日もかかる
  • 生理予定日の前から少量の出血が続く

該当する方は高温期が不安定なタイプ低温期が長く高温期が短いタイプもあわせてご覧ください。

病院での確認方法

高温期の中頃に血中プロゲステロンを測る方法が一般的です。おおむね10ng/mL以上が目安とされますが、プロゲステロンは1日の中でも変動が大きく、一度の測定だけで判断できるものではありません。基礎体温表と合わせて見ていくことになります。

いちばん大事なこと|黄体は卵胞からできる

ここが、この記事でいちばんお伝えしたい点です。

黄体は排卵後に新しくできる臓器ではありません。排卵した後の卵胞そのものが変化して黄体になります。つまり、しっかり育った卵胞からはしっかりした黄体ができ、育ちが足りない卵胞からは力の弱い黄体しかできません。

高温期が短い、上がりきらないという現象を、高温期の問題として見ている限り、堂々巡りになります。見るべきは低温期です。低温期に卵胞がどう育っているか、その材料が足りているか。ここに手を付けないと、高温期は変わってきません。

「高温期だけ何とかしたい」というご相談をよくいただきますが、私が低温期の過ごし方と食事のお話から始めるのは、このためです。

背景にあるもの

栄養の不足

ホルモンはコレステロールを材料につくられ、その運搬や代謝には鉄や亜鉛、たんぱく質が関わります。極端な食事制限や、朝食抜きの生活が続いていると、材料そのものが足りません。特に隠れた鉄不足は月経のある女性に多く、フェリチンが低いときの食事と鉄の補い方にまとめています。

甲状腺やプロラクチン

甲状腺機能の低下や高プロラクチン血症があると、排卵と黄体のはたらきの両方に影響します。高温期が安定しない状態が続くなら、これらの検査を受けているかを確認してみてください。

ストレスと睡眠

排卵と黄体の指令は脳から出ています。睡眠が削られ、緊張が続く生活は、この指令系統そのものを乱します。

中医学から見た黄体機能不全

腎陽虚|温める力が足りない

高温期は体を温める力が高まる時期です。その力の源が「腎陽」。足腰が冷える、朝がつらい、夜間に目が覚める、むくみやすい。高温期が上がりきらない方の土台によく見られます。

脾虚・気血不足|材料と運搬の不足

「脾」は胃腸のはたらきを指し、食べたものから気血をつくる役割を担います。ここが弱いと、良い食事をしても体に取り込めません。食後に眠くなる、軟便、疲れやすい、顔色が優れない。

肝鬱|緊張で巡りが滞る

高温期の後半に体温がガクッと下がる方には、この傾向が多く見られます。生理前のイライラ、ため息、胸の張り。「今回こそは」という緊張そのものが影響していることもあります。

瘀血|滞りで届かない

経血に塊が多い、月経痛が強い、肩こりが固定している。材料はあっても届かない状態です。

日々できること

  • 朝食を抜かない——1日の代謝と体温のリズムをつくる起点です
  • たんぱく質を3食に分ける——卵胞と内膜の材料になります
  • 下半身を冷やさない——腹巻き、靴下、湯船。高温期だけでなく低温期からです
  • 睡眠の時刻をそろえる——長さより、寝る時間がぶれないことのほうが効きます
  • 高温期に無理をしない——激しい運動や過労は、この時期には向きません

病院の治療との関係

婦人科では、hCG注射やプロゲステロン製剤による黄体補充が行われることがあります。足りないものを直接補う治療で、必要な場面では確実な手立てになります。

一方、漢方が受け持つのは、補わなくても黄体が育つ土台をつくるほうです。並行して取り組むことも珍しくありません。通院中の方は治療内容を伺ったうえで組み立てますので、検査結果をお持ちください。

よくある質問

Q. 高温期が10日ちょうどなら問題ありませんか?

日数だけで線を引けるものではありません。上がり方、差の大きさ、途中の下がり、生理前の出血の有無まで含めて見ます。数周期分を並べてはじめて傾向が見えてきます。

Q. 高温期を長くする方法はありますか?

高温期そのものを直接伸ばす、という発想ではうまくいきません。低温期に卵胞がしっかり育てば、結果として高温期は整ってきます。順番が逆にならないようにしてください。

Q. どのくらいで変化しますか?

卵胞は排卵に至るまで数ヶ月かけて育ちます。ですので、少なくとも周期3回分ほどは見ていただくようお伝えしています。もちろん個人差があります。

西岡より(薬剤師・西岡敬三)

基礎体温表をお持ちになった方に、私はまず低温期を見ます。高温期のことでご相談に来られたのに、と不思議がられることもあるのですが、答えはたいてい低温期に書いてあります。

そしてもうひとつ、高温期が短いと分かった月に落ち込んでしまう方が多いのですが、その落ち込みが次の周期に影響します。記録は自分を採点するためのものではなく、体からの手紙です。うまくいかなかった月は「いまここが足りていない」と教えてくれた月だと考えてください。

基礎体温表と、血液検査の結果があればそれもお持ちいただければ、どこから手を付けるとよいかご一緒に整理できます。ご相談はこちらから承っています。