高温期に体温が下がる・ガタガタ不安定|黄体を支える漢方的な整え方

「高温期が不安定なタイプ」とは、高温期の途中で体温がガクッと下がる日がある、あるいは生理予定日より早くから体温が下がり始める基礎体温パターンです。排卵後の身体を支える力(西洋医学でいう黄体の働き)が揺らいでいるサインと考えられます。漢方の葵堂薬局(大阪・堺/薬剤師 西岡敬三)が、東洋医学からの整え方を解説します。

この記事の要点

  • 高温期の中だるみ・早すぎる下降は、受精卵を支える環境の揺らぎを映すことがある
  • 東洋医学では「脾」(支え持ち上げる力)と「腎の陽気」(温め続ける力)の弱りと捉える
  • 胃腸をいたわり、コツコツ温める食養生が高温期の安定につながる

このタイプの見分け方チェックリスト

  • 高温期の途中で1日だけガクッと下がる日がある(中だるみ型)
  • 生理の3日以上前から体温が下がり始める
  • 高温期の体温がジグザグと安定しない
  • 疲れやすく、食後に眠くなりやすい
  • 胃腸が弱い、軟便気味、食が細い

陰陽五行から見た原因——「支える脾」と「温める腎」

五行で「脾」は土に属し、気血を生み出すと同時に「持ち上げて支える」働き(升提作用)を担います。高温期を一定に保つには、体温を支え続けるエネルギーの安定供給が必要で、脾が弱ると供給が途切れがちになり体温が揺らぎます。さらに温め続ける燃料となるのが腎の陽気。土台の腎と供給役の脾、どちらが弱っても高温期は不安定になります。胃腸の弱さを自覚する方が多いのはこのためです。

相談現場でよくある傾向

葵堂薬局のご相談では、このタイプの方に「朝食を抜きがち」「冷たい飲み物が習慣」「頑張りすぎて慢性的に疲れている」という生活背景がよく重なります。血液検査ではタンパク質や鉄の不足が見られることも多く、高温期を支える材料そのものが足りていない印象です。逆に言えば、食事と胃腸のケアという足元から変えられるタイプでもあり、3ヶ月でグラフの印象が変わる方も少なくありません。

当薬局が血液検査データの読み解きを重視するのには理由があります。受精卵を何回戻しても妊娠に至らない方、妊娠してもすぐに流産してしまう方をたくさん見てきて、「身体が受け入れる体制になっていなければ、脳も妊娠の許可を出さない」と感じてきたからです。女性は月経がある分、鉄分不足の方が多いのに、貯蔵鉄(フェリチン)までは調べられないことがほとんどです。亜鉛が不足すれば細胞分裂に影響し、子宮内の血流が悪ければ流産リスクにも関わります。しっかり「血になるもの」を食べることが、高温期を支える土台になります。

このタイプの食養生——胃腸をいたわり、コツコツ温める

  • 脾を養う:米(おかゆ)・山芋・かぼちゃ・じゃがいも・鶏肉・なつめ
  • 陽気を補う:生姜・シナモン・えび・くるみ
  • 食べ方の工夫:よく噛む・温かい状態で食べる・朝食を抜かない
  • 控えたいもの:冷たい飲み物・生もの中心の食事・夜遅い食事

体質に合わせて検討される代表的な漢方薬

  • 補中益気湯:気を補い「持ち上げる力」を助ける代表処方。疲れやすい方に
  • 八味地黄丸:腎の陽気を補う(体質により)
  • 当帰芍薬散:血の不足と冷えを併せ持つ方に

脾と腎、どちらの弱りが主体かで処方は変わります。基礎体温表を持って薬剤師にご相談ください。

よくある質問

Q. 高温期の中だるみは黄体機能不全ですか?

A. 1日の凹みだけで診断はできません。測定条件(睡眠時間・測る時刻)でも変動します。毎周期続く場合は婦人科での検査と体質面の見直しを併せてご検討ください。

Q. 体温がジグザグする一番の原因は?

A. 測定誤差を除けば、体温を支えるエネルギー供給の不安定さ——東洋医学でいう脾気虚が背景にあることが多い印象です。まず食生活を整えることから始めましょう。

Q. 測り方で気をつけることは?

A. 毎朝同じ時刻・起き上がる前に舌下で測るのが基本です。睡眠4時間未満の日や飲酒翌日は参考値と考え、メモを添えておくと読み解きやすくなります。

まとめ

高温期の安定は「支える力」の安定。胃腸をいたわる温かい食事が、受精卵を迎える環境づくりの第一歩です。

あなたの基礎体温表、一緒に読み解きませんか?
漢方の葵堂薬局では、基礎体温表をもとにした無料の漢方相談を全国から電話・オンラインで受け付けています。
フリーダイヤル 0120-789-301(完全予約制)

西岡より——「畑を耕す」という考え方

私はよく、妊活を畑づくりに例えてお話しします。作物を育てたことのない人が、普通の10倍も高い種を買って「さあ育てるぞ」と意気込んだとします。植える場所に選んだのは、廃校になった小学校の運動場。何度か芽は出ましたが枯れてしまい、何回植えてもうまくいきません。そこを通りかかったおじいさんが言いました。「こんな土の硬い、栄養のないところに植えても作物は育たないよ。植えるなら、しっかり耕して肥料をまいてからだ」。

人の身体も同じだと私は考えています。どんなに良い受精卵でも、迎える子宮が冷えて栄養が足りなければ、根を張ることは難しい。日本は体外受精の実施件数では世界有数ですが、出生率はそれに比例していません。最先端の医療はもちろん必要です。ただその前に、「妊娠しやすい身体づくり」が置き去りにされていないでしょうか。

忘れられない方がいます。43歳で体外受精中、採卵できた3個の卵子のうちランクの良い2個を戻しても妊娠に至らず、「残っているのは一番ランクの低い卵子だし、年齢も年齢だから」と、3回目を始める前から諦めておられました。私はこうお話ししました。「ランクは低いかもしれません。でもその卵子自体は、必死に生きようとしています。それを最初からダメだと決めつけるのはどうでしょう。『しっかり私が受け止めてあげるわ』と、前向きに迎えてあげませんか」。この方はその3回目で妊娠され、お子さんが小学生になった今も、お店の前で会うと挨拶を交わす仲です。もちろん、すべての方が同じ経過をたどるわけではありません。それでも、身体と心の畑を耕すことには意味がある——そう教えてくれた出会いでした。

妊活は結果が出るまで時間がかかるものです。焦るあまり、あれもこれもと頑張りすぎて、ご自身をすり減らしてしまう方をたくさん見てきました。どうか一人ですべてを抱え込まず、ご自身を一番に大切にしてください。

この記事の執筆・監修者

西岡敬三(漢方の葵堂薬局 代表・薬剤師)

西岡 敬三(にしおか けいぞう)
漢方の葵堂薬局(大阪府堺市) 代表/薬剤師

1987年 京都薬科大学卒業
1987年 帝国化学産業株式会社入社:新薬の研究(論文:実験的胃粘膜傷害に対するBenexate・CDの作用)
1990年 帝国化学産業株式会社退社、漢方の修行へ
1998年 漢方の葵堂薬局を開局
2001年 有限会社漢方の葵堂薬局 設立

西洋医学にも精通した漢方専門薬剤師。「食べたもので身体ができている」をモットーに栄養学にも精通し、血液検査データの分析と漢方・中医学・食養生の視点から、一人ひとりの体質に合わせた養生と漢方相談を行っている。NLPマスタープラクティショナー認定。20年以上にわたり全国から不妊・二人目不妊の相談を受け、電話・オンラインでのカウンセリングにも対応。

著書:
『心もカラダもラクになる 血流の整えかた』
『病院では教えてくれない 西岡式妊活で妊娠まっしぐら』

※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、医学的な診断・治療に代わるものではありません。漢方薬は体質によって適否が異なるため、服用の際は必ず薬剤師にご相談ください。婦人科・不妊治療に通院中の方は主治医にもご相談のうえ併用をご検討ください。