排卵障害と漢方の考え方|排卵しにくいときの体質の見直し方
「排卵障害かもしれない」と言われた方、生理周期が乱れがちで排卵しているか不安な方、排卵誘発剤による治療を続けている方に向けて、排卵障害の基本と、漢方で体質からどう考えるかを薬剤師が解説します。
はじめにお伝えしたいのは、排卵障害の検査と治療は婦人科(病院)の役割であり、漢方相談はそれを置き換えるものではない、ということです。当店では、病院の検査・治療と併行しながら「妊娠しやすい身体づくり」を目指す考え方でご相談をお受けしています。
排卵障害とは
排卵障害とは、卵巣から卵子の排出(排卵)がうまく行われない状態を指し、不妊の主な要因のひとつとされています。大きく次の2つに分けて考えられています。
| 中枢性 | 脳(視床下部・下垂体)からのホルモン指令の乱れによって起こるタイプ。強いストレス、過度なダイエットや急激な体重変動、睡眠不足のほか、甲状腺機能の異常や高プロラクチン血症などが関係するとされています。 |
|---|---|
| 卵巣性 | 卵巣そのものの働きに要因があるタイプ。多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)、卵巣機能の低下、黄体化非破裂卵胞症候群(LUF)などが代表的です。 |
こんなサインはありませんか
- 月経周期が乱れる・生理が来ない・経血量が極端に少ない、または多い
- 基礎体温が低温期と高温期の二層に分かれない(二層にならない無排卵型グラフの見方)
- 排卵期のおりものの変化が感じられない
- 月経以外のタイミングでの出血(不正出血)
基礎体温は、排卵の有無やホルモンリズムを推測する手がかりになります。測り方やタイプ別の見方は基礎体温タイプ別ガイドにまとめています。
まず婦人科で確認したいこと
排卵障害が疑われるときは、まず婦人科の検査で「どこに要因があるか」を確認することが大切です。一般に、ホルモン検査(LH・FSH・エストラジオール・プロラクチン・甲状腺ホルモンなど)や超音波検査などで調べられ、要因に応じて排卵誘発剤などの治療が検討されます。
漢方相談は、こうした病院の検査・治療と併行しながら、体質や生活の面から身体を整えていく位置づけです。検査結果の数値をお持ちいただければ、体質の見立てに活かすことができます。
漢方では排卵障害をどう考えるか
西岡の考え
ここから先は中医学の理論にもとづく身体の捉え方であり、上でご説明した排卵障害の医学的な説明とは別の視点です。漢方が診断や治療に置き換わるものではありません。婦人科での診断・治療を前提に、体質という角度から何ができるかをお伝えするものとしてお読みください。
東洋医学では、身体の状態を「気・血・水」のバランスや五臓(肝・心・脾・肺・腎)の働きから捉えます。排卵のリズムが乱れる背景にも、次のような体質的な偏りが関わっていると考えます。
| 気 | 生命活動のエネルギー。不足(気虚)や滞り(気滞)があると、ホルモンのリズムに影響が及ぶと考えられています。 |
|---|---|
| 血 | 栄養や潤いを全身に運ぶ働き。不足(血虚)や滞り(瘀血)があると、卵巣や子宮のめぐりが悪くなると考えられています。 |
| 水 | 体内の水分代謝。滞り(水滞)があると、めぐり全体が重くなると考えられています。 |
五臓のなかでは特に、血を蓄えてめぐりを調整する「肝」、消化吸収によって気血をつくる「脾」、生殖やホルモンとの関わりが深いとされる「腎」の働きを重視します。
体質タイプの例と代表的な漢方薬
体質の見立てに応じて、次のような考え方で漢方薬が検討されることがあります。実際の選択は体質・症状・服用中のお薬によって異なりますので、自己判断での服用は避け、必ず薬剤師にご相談ください。
| 血が不足しがちなタイプ(血虚) | 血を補い、めぐりを整える考え方。当帰芍薬散、温経湯などが用いられることがあります。 |
|---|---|
| 気のめぐりが滞りがちなタイプ(気滞) | ストレスなどで滞った気をめぐらせる考え方。逍遥散などが用いられることがあります。 |
| 血のめぐりが滞りがちなタイプ(瘀血) | 滞った血のめぐりを整える考え方。桂枝茯苓丸などが用いられることがあります。 |
| 腎の働きを補いたいタイプ(腎虚) | 生殖と関わりが深いとされる腎を補う考え方。六味地黄丸などが用いられることがあります。 |
ご自身の体質タイプが気になる方は、妊娠しやすい身体づくりと体質分類の記事も参考にしてください。
生活・栄養でできる身体づくり
- 睡眠とストレスケア:中枢性の排卵障害にはストレスや睡眠不足が関わるとされています。就寝時刻を整え、意識的に休む時間をつくりましょう。
- 極端なダイエットをしない:急激な体重減少・増加はホルモン指令の乱れにつながるとされています。
- 身体を冷やさない:下腹部や足元の冷え対策は、めぐりを整える基本です。
基礎体温タイプ別ガイド/基礎体温が二層にならない無排卵型/妊娠しやすい身体づくりと体質分類//妊活中のかくれ貧血対策|フェリチンが低いときの食事
ホルモン値の読み方はLH・E2の読み方を、タイミング法・人工授精と並行して進める方はタイミング法・人工授精と並行してできることをご覧ください。
お読みいただくうえでのお願い
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、医学的な診断・治療に代わるものではありません。漢方薬は体質によって適否が異なるため、服用の際は必ず薬剤師にご相談ください。婦人科・不妊治療に通院中の方は主治医にもご相談のうえ併用をご検討ください。
参考資料
- 日本産科婦人科学会
不妊症(一般の皆さまへ) - 日本産科婦人科学会
多囊胞性卵巣症候群に関する全国症例調査の結果と本邦における新しい診断基準(2024)について - 日本生殖医学会
生殖医療Q&A(一般のみなさまへ)
最終確認:2026年9月/監修:薬剤師 西岡敬三
この記事の執筆・監修者
西岡 敬三(にしおか けいぞう)
漢方の葵堂薬局(大阪府堺市) 代表/薬剤師
1987年 京都薬科大学卒業
1987年 帝国化学産業株式会社入社:新薬の研究(論文:実験的胃粘膜傷害に対するBenexate・CDの作用)
1990年 帝国化学産業株式会社退社、漢方の修行へ
1998年 漢方の葵堂薬局を開局
2001年 有限会社漢方の葵堂薬局 設立
西洋医学にも精通した漢方専門薬剤師。「食べたもので身体ができている」をモットーに栄養学にも精通し、血液検査データの分析と漢方・中医学・食養生の視点から、一人ひとりの体質に合わせた養生と漢方相談を行っている。NLPマスタープラクティショナー認定。20年以上にわたり全国から不妊・二人目不妊の相談を受け、電話・オンラインでのカウンセリングにも対応。
著書:
『心もカラダもラクになる 血流の整えかた』
『病院では教えてくれない 西岡式妊活で妊娠まっしぐら』
初回公開日:2024年7月9日(旧記事を全面改稿のうえ移設)/最終更新日:2026年8月6日
排卵障害の背景として最も多いのが多嚢胞性卵巣症候群です。PCOS(多嚢胞性卵巣症候群)と妊活もあわせてご覧ください。