基礎体温が二層にならない(無排卵型・一層型)|漢方で排卵リズムを取り戻す考え方

「無排卵型(一層型)」とは、基礎体温が低温期と高温期の二層に分かれず、平坦なまま推移するパターンです。高温期がないことは排卵が起きていない可能性を示す重要なサインで、生理のような出血があっても無排卵のことがあります。このタイプはまず婦人科での検査が最優先です。そのうえで、漢方の葵堂薬局(大阪・堺/薬剤師 西岡敬三)が、体質面からの併用サポートの考え方を解説します。

この記事の要点

  • グラフが一層=排卵していない可能性。出血があっても無排卵はあり得るため、まず婦人科受診を
  • 東洋医学では腎の弱りに加え、「痰湿」(余分な水分・脂の停滞)や血の不足が絡むと捉える
  • 漢方・食養生は病院の治療と対立せず、排卵する体力の土台づくりとして併用できる

このタイプの見分け方チェックリスト

  • 基礎体温がほぼ平坦で、高温期が確認できない
  • 周期が39日以上、または不定期
  • 生理が来ても量が極端に少ない・ダラダラ続く
  • 急激なダイエットや体重増加の経験がある
  • 婦人科で多嚢胞性卵巣(PCOS)の傾向を指摘されたことがある

陰陽五行から見た原因——腎の弱りと「痰湿」

排卵という大仕事には、腎に蓄えられた生命力(精)と、それを押し出す陽気が必要です。腎が大きく弱ると、排卵のスイッチそのものが入りにくくなると東洋医学では考えます。加えてこのタイプで特徴的なのが「痰湿」——甘いもの・脂もの・冷たいものの摂りすぎや代謝低下で生じる、余分な水分や脂の停滞です。痰湿が卵巣周囲の巡りを妨げるイメージで、多嚢胞傾向の方によく見られる体質像です。急激なダイエットによる血の不足(血虚)が引き金になるケースもあります。

相談現場でよくある傾向

葵堂薬局のご相談では、無排卵のご相談は「病院で誘発剤の治療中だが、身体の土台も整えたい」という併用型が大半です。生活背景としては、極端な食事制限の経験、甘い飲み物の習慣、慢性的な運動不足がよく重なります。病院の治療で排卵の機会をつくりながら、漢方と食養生で応えられる身体を育てる——この二人三脚が最も現実的で、遠回りに見えて近道だと考えています。

このタイプの食養生——痰湿を除き、腎を養う

  • 痰湿を除く:はと麦・海藻類・きのこ・冬瓜・大根・緑茶
  • 腎を養う:黒豆・黒ごま・くるみ・山芋・えび
  • 血を補う(痩せ型・血虚傾向の方):赤身肉・レバー・卵・なつめ
  • 控えたいもの:甘い飲み物・スナック菓子・極端な食事制限・冷たいものの習慣

体質に合わせて検討される代表的な漢方薬

  • 温経湯:冷えと血の不足を伴う月経不順に用いられる代表処方
  • 当帰芍薬散:血虚と水の偏りを整える。痩せ型で冷えの強い方に
  • 桂枝茯苓丸:巡りの滞りが目立つ方に(体質により)

無排卵の背景は多岐にわたるため、自己判断での服用は避け、検査結果と基礎体温表を持って薬剤師にご相談ください。

よくある質問

Q. 生理が来ていれば排卵していますよね?

A. 必ずしもそうとは言えません。無排卵でもホルモンの変動で出血が起こること(無排卵周期症)があります。グラフが一層なら、出血の有無にかかわらず婦人科での確認をおすすめします。

Q. 無排卵は漢方だけで治りますか?

A. 漢方だけでの改善をお約束することはできません。まず婦人科での検査・治療が基本です。漢方と食養生は、その効果を受け止める身体の土台づくりとして併用する位置づけが適切と考えています。

Q. ダイエットと無排卵は関係ありますか?

A. 大いにあります。急激な減量や低体重は、身体が「妊娠より生存を優先する」状態を招き、排卵が止まる要因になり得ます。体重を戻す・栄養を満たすことが再開への第一歩になる方も多くいらっしゃいます。

まとめ

一層型のグラフは身体からの重要なメッセージ。婦人科の力を借りつつ、食と漢方で「排卵する体力」を育てていきましょう。一人で悩まず、まずはご相談ください。

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西岡より——「畑を耕す」という考え方

私はよく、妊活を畑づくりに例えてお話しします。作物を育てたことのない人が、普通の10倍も高い種を買って「さあ育てるぞ」と意気込んだとします。植える場所に選んだのは、廃校になった小学校の運動場。何度か芽は出ましたが枯れてしまい、何回植えてもうまくいきません。そこを通りかかったおじいさんが言いました。「こんな土の硬い、栄養のないところに植えても作物は育たないよ。植えるなら、しっかり耕して肥料をまいてからだ」。

人の身体も同じだと私は考えています。どんなに良い受精卵でも、迎える子宮が冷えて栄養が足りなければ、根を張ることは難しい。日本は体外受精の実施件数では世界有数ですが、出生率はそれに比例していません。最先端の医療はもちろん必要です。ただその前に、「妊娠しやすい身体づくり」が置き去りにされていないでしょうか。

忘れられない方がいます。43歳で体外受精中、採卵できた3個の卵子のうちランクの良い2個を戻しても妊娠に至らず、「残っているのは一番ランクの低い卵子だし、年齢も年齢だから」と、3回目を始める前から諦めておられました。私はこうお話ししました。「ランクは低いかもしれません。でもその卵子自体は、必死に生きようとしています。それを最初からダメだと決めつけるのはどうでしょう。『しっかり私が受け止めてあげるわ』と、前向きに迎えてあげませんか」。この方はその3回目で妊娠され、お子さんが小学生になった今も、お店の前で会うと挨拶を交わす仲です。もちろん、すべての方が同じ経過をたどるわけではありません。それでも、身体と心の畑を耕すことには意味がある——そう教えてくれた出会いでした。

妊活は結果が出るまで時間がかかるものです。焦るあまり、あれもこれもと頑張りすぎて、ご自身をすり減らしてしまう方をたくさん見てきました。どうか一人ですべてを抱え込まず、ご自身を一番に大切にしてください。

この記事の執筆・監修者

西岡敬三(漢方の葵堂薬局 代表・薬剤師)

西岡 敬三(にしおか けいぞう)
漢方の葵堂薬局(大阪府堺市) 代表/薬剤師

1987年 京都薬科大学卒業
1987年 帝国化学産業株式会社入社:新薬の研究(論文:実験的胃粘膜傷害に対するBenexate・CDの作用)
1990年 帝国化学産業株式会社退社、漢方の修行へ
1998年 漢方の葵堂薬局を開局
2001年 有限会社漢方の葵堂薬局 設立

西洋医学にも精通した漢方専門薬剤師。「食べたもので身体ができている」をモットーに栄養学にも精通し、血液検査データの分析と漢方・中医学・食養生の視点から、一人ひとりの体質に合わせた養生と漢方相談を行っている。NLPマスタープラクティショナー認定。20年以上にわたり全国から不妊・二人目不妊の相談を受け、電話・オンラインでのカウンセリングにも対応。

著書:
『心もカラダもラクになる 血流の整えかた』
『病院では教えてくれない 西岡式妊活で妊娠まっしぐら』

※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、医学的な診断・治療に代わるものではありません。漢方薬は体質によって適否が異なるため、服用の際は必ず薬剤師にご相談ください。婦人科・不妊治療に通院中の方は主治医にもご相談のうえ併用をご検討ください。