低温期が短い・体温が高すぎる基礎体温|卵胞期が短い体質の漢方と食養生

「低温期が短い・高すぎるタイプ」とは、卵胞が育つ低温期が10日未満と短く排卵が早すぎる、あるいは低温期の体温そのものが高め(36.5℃前後以上)で二層の境目が曖昧になりやすい基礎体温パターンです。周期全体が短くなってきた方に多く、卵胞が十分に育つ前に排卵している可能性を映すサインです。漢方の葵堂薬局(大阪・堺/薬剤師 西岡敬三)が解説します。

この記事の要点

  • 低温期の短さは「卵胞が育つ時間の不足」、低温期の高さは「潤い不足による熱」を映すことがある
  • 東洋医学では腎の陰(潤い)と血の不足が背景にあると捉える
  • 睡眠の確保と、陰血を補う食養生が土台づくりの中心になる

このタイプの見分け方チェックリスト

  • 生理開始から排卵(体温上昇)までが10日前後しかない
  • 月経周期が25日以下と短めになってきた
  • 低温期でも36.5℃前後あり、グラフの二層がはっきりしない
  • のぼせやすい、手のひら・足の裏がほてる
  • 以前より経血量が減った気がする

陰陽五行から見た原因——卵胞を育てる「陰血」の消耗

低温期は東洋医学でいう「陰の時期」。卵胞をじっくり潤し育てるには、腎の陰と血という材料が必要です。陰血が消耗すると卵胞を育てる時間を確保できず排卵が前倒しになり、同時に潤い不足の熱で低温期の体温が押し上げられる——これがこのタイプの基本的な構図です。年齢を重ねると腎陰は自然に減っていくため、周期短縮は加齢のサインとして現れることもありますが、夜更かし・過労・強いストレスは年齢に関係なく陰血を消耗させます。

相談現場でよくある傾向

葵堂薬局のご相談では、「周期が28日から24日に縮んできた」という変化をきっかけに来られる方が多いタイプです。共通するのは睡眠の短さと忙しさ。血液検査を拝見すると貯蔵鉄(フェリチン)が低い方も多く、材料不足のまま周期だけが速く回っている印象を受けます。周期を無理に戻すことより、まず「削られている陰血を補う」ことを優先してご提案しています。

このタイプの食養生——陰と血をチャージする

  • 陰を補う:山芋・白きくらげ・豆腐・梨・ぶどう・貝類(あさり・牡蠣)
  • 血を補う:豚肉・卵・レバー・ほうれん草・黒ごま・なつめ
  • 最重要の習慣:23時までの就寝。陰血は睡眠中に養われます
  • 控えたいもの:強い辛味・アルコール・カフェインの摂りすぎ・激しすぎる運動

体質に合わせて検討される代表的な漢方薬

  • 六味丸:腎陰を補う基本処方。ほてり・乾燥を伴う方に
  • 杞菊地黄丸:目の疲れ・かすみを伴う陰虚の方に
  • 四物湯:血の不足が目立つ方に

周期短縮の背景にはホルモン変化が隠れていることもあります。婦人科での検査と併せて、薬剤師にご相談ください。

よくある質問

Q. 周期が短くなってきたのは卵巣機能の低下ですか?

A. 加齢に伴って見られる変化の一つではありますが、自己判断はできません。気になる場合は婦人科でホルモン検査を受けつつ、消耗を減らし補う養生を並行するのが現実的です。

Q. 低温期の体温が36.5℃以上あるのは問題ですか?

A. 平熱には個人差があるため一概には言えませんが、二層の境目が曖昧になるほど高い場合は、潤い不足による熱のこもりを疑って養生を整える価値があります。

Q. 睡眠はそんなに影響しますか?

A. 東洋医学では夜は陰血を養う時間と考えます。就寝が遅い生活が続くと材料の回復が追いつきません。妊活中は「23時就寝」を最優先の養生としておすすめしています。

まとめ

このタイプは「急がば補え」。眠りと陰血チャージで卵胞にじっくり育つ時間を取り戻しましょう。

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西岡より——「畑を耕す」という考え方

私はよく、妊活を畑づくりに例えてお話しします。作物を育てたことのない人が、普通の10倍も高い種を買って「さあ育てるぞ」と意気込んだとします。植える場所に選んだのは、廃校になった小学校の運動場。何度か芽は出ましたが枯れてしまい、何回植えてもうまくいきません。そこを通りかかったおじいさんが言いました。「こんな土の硬い、栄養のないところに植えても作物は育たないよ。植えるなら、しっかり耕して肥料をまいてからだ」。

人の身体も同じだと私は考えています。どんなに良い受精卵でも、迎える子宮が冷えて栄養が足りなければ、根を張ることは難しい。日本は体外受精の実施件数では世界有数ですが、出生率はそれに比例していません。最先端の医療はもちろん必要です。ただその前に、「妊娠しやすい身体づくり」が置き去りにされていないでしょうか。

忘れられない方がいます。43歳で体外受精中、採卵できた3個の卵子のうちランクの良い2個を戻しても妊娠に至らず、「残っているのは一番ランクの低い卵子だし、年齢も年齢だから」と、3回目を始める前から諦めておられました。私はこうお話ししました。「ランクは低いかもしれません。でもその卵子自体は、必死に生きようとしています。それを最初からダメだと決めつけるのはどうでしょう。『しっかり私が受け止めてあげるわ』と、前向きに迎えてあげませんか」。この方はその3回目で妊娠され、お子さんが小学生になった今も、お店の前で会うと挨拶を交わす仲です。もちろん、すべての方が同じ経過をたどるわけではありません。それでも、身体と心の畑を耕すことには意味がある——そう教えてくれた出会いでした。

妊活は結果が出るまで時間がかかるものです。焦るあまり、あれもこれもと頑張りすぎて、ご自身をすり減らしてしまう方をたくさん見てきました。どうか一人ですべてを抱え込まず、ご自身を一番に大切にしてください。

この記事の執筆・監修者

西岡敬三(漢方の葵堂薬局 代表・薬剤師)

西岡 敬三(にしおか けいぞう)
漢方の葵堂薬局(大阪府堺市) 代表/薬剤師

1987年 京都薬科大学卒業
1987年 帝国化学産業株式会社入社:新薬の研究(論文:実験的胃粘膜傷害に対するBenexate・CDの作用)
1990年 帝国化学産業株式会社退社、漢方の修行へ
1998年 漢方の葵堂薬局を開局
2001年 有限会社漢方の葵堂薬局 設立

西洋医学にも精通した漢方専門薬剤師。「食べたもので身体ができている」をモットーに栄養学にも精通し、血液検査データの分析と漢方・中医学・食養生の視点から、一人ひとりの体質に合わせた養生と漢方相談を行っている。NLPマスタープラクティショナー認定。20年以上にわたり全国から不妊・二人目不妊の相談を受け、電話・オンラインでのカウンセリングにも対応。

著書:
『心もカラダもラクになる 血流の整えかた』
『病院では教えてくれない 西岡式妊活で妊娠まっしぐら』

※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、医学的な診断・治療に代わるものではありません。漢方薬は体質によって適否が異なるため、服用の際は必ず薬剤師にご相談ください。婦人科・不妊治療に通院中の方は主治医にもご相談のうえ併用をご検討ください。