不妊かな?と心配になったら、最初に知って欲しいこと
不妊かな?と心配になったら、まずは、正しい知識を持ちましょう。
妊娠について多くの情報にあふれていますが、「不妊になる食べ物」や「排卵日に子作りしないと妊娠できない」など、人間のからだを単純に見ることはお勧めいたしません。何か一つの現象を起こしている原因は、たった一つしかないわけではありません。
Case1: ”できちゃった婚”の多くの方が「危険日を避けていたのに」と話されています。また、精子を子宮内へ直接注入する人工授精であっても、妊娠確率は100%ではありません。
Case2: いじめにあって不登校になった女の子が、生理がこなくなったと相談に来られました。彼女の場合、子宮が悪いのではなくストレスによるものです。
「子供を授かる」ことは、「こうだからこう」という単純な話ではないのです。人の体を単純化し、そこから外れると「おかしい」とする考えを、いったん脇においてみませんか? 不安はストレスになり、結果的に妊娠も遠のいてしまいます。
そうは言っても、妊娠・出産には「タイムリミット」がありますから、 焦って思い詰めてしまう方が多くいらっしゃいます。
漢方の葵堂薬局では、「じっくりお話をお聞きする」をモットーとしています。 不安な時、焦ってしまった時、気軽にお電話をください。一人じゃありませんよ。
不妊とは?基礎体温で分かること
日本産科婦人科学会では、不妊とは、「健康な男女が子供を望んで性行為を行っているにもかかわらず1年以上妊娠に至れない状態」と定義しています。
不妊かな?と思ったら、まずは基礎体温をつけてみましょう。
基礎体温とは、朝目が覚め、からだを動かす前の安静時の体温のことです。女性の体温は、およそ0.3~0.5度の間で、周期的に変化しています。そのリズムを知ることで、排卵の有無や月経の時期、妊娠しやすい時期など、からだの状態を知ることができます。
- 基礎体温を2~3ヶ月つけてみると、自分の体質が見えてきます。
- この基礎体温表は、病院でも必ず記録するように言われるものです。
基礎体温表を活用した大まかな体質の分類
標準的なタイプ
標準的な基礎体温表の特徴は・・・
(1)高温期が安定して2週間前後続く
(2)高温期と低温期の差が0.3~0.5℃位ある。
(3)低温期から高温期へ1~2日で移行する。
これが標準的な基礎体温表のもつ3つの条件です。

標準的なタイプの人でも妊娠しない場合は、基本的な周期改善を行います。
イライラタイプ
赤ちゃんが生まれないことがストレスになっているタイプは、この基礎体温表が以下のように変化します。このようにはグラフの波動が大きくなります。これは、ストレスによる肝の疎泄作用の失調。具体的に言いますとストレスで「イライラ」すると誰でもこのようになります。
このタイプは自律神経が不安定で神経過敏になっている方が多いです。西洋医学では高プロラクチン血症、月経前緊張症、自律神経失調症で多く見られます。

漢方で言うところの「肝の気の流れを良くして」神経の高ぶりを鎮めて、落ち着かせる事が大切です。
低温期が長く、高温期が短いタイプ
不妊症に比較的多いタイプです。卵子の成熟度が低く、それが排卵の遅れとなって現れます。結果として黄体ホルモンの分泌が悪くなります。西洋医学的には黄体機能不全、軽い排卵障害と病名がつくことが多いです。

このタイプは低温期の陰血が不足しています。排卵期にスムーズに移行できません。高温期には陽が不足して短くなります。低温期にしっかりは陰血を補い少量の補陽を加えます。
高温期への移行が緩やかなタイプ
これも不妊症でよく見られるタイプです。西洋医学では黄体機能不全、排卵障害、高プロラクチン血症などの病名が考えられます。

(1)排卵期に陽気が不足して体温が上がらない。
(2)血液が滞って体温の上昇を妨げている。
などの理由が考えられます。
高温期が不安定なタイプ
高温期の途中で体温が下がったり、生理が近づくと体温が下がるタイプです。西洋医学では黄体機能不全が考えられます。

高温期が長すぎるタイプ
高温期が14日以上続いてしまう、あるいは高温期と低温期の差が0.5℃以上あるタイプです。不妊症では比較的少ないタイプです。西洋医学的には黄体萎縮不全、月経前緊張症などが考えられます。

低温期が短いまたは高すぎるタイプ
低温期が短く、排卵が早いまたは低温期が高すぎるタイプ。ホルモン分泌異常が考えられます。

陰の不足で相対的な陽気の過剰状態になっています。陰の不足は、排卵期のオリモノの分泌不足に現れることが多いです。低温期にしっかりと滋陰をされることが重要です。
無排卵型(一層型)
排卵がなく、高温期もないタイプです。無排卵のため高温期がありません。まず排卵を作る為の漢方治療を行います。
しかし、実際には「いろいろなタイプが細かく組み合わさっている」場合がほとんどです。「見本」通りの綺麗なグラフにはならないのです。
たとえばタイプ2(イライラ型)とタイプ3~7が混在していたり、さらに3つのタイプが見受けられたりと様々です。
「不妊かな」と悩みはじめると、神経質になりがちです。「グラフの形が違う!病気だったらどうしよう」と不安になるようでしたら早めに病院に行き、基礎体温の見方を教えてもらうと安心できます。不妊の原因としては、統計的には男女半々となっていますので、病院にはお二人で行かれるのが理想です。
陰の不足で相対的な陽気の過剰状態になっています。陰の不足は、排卵期のオリモノの分泌不足に現れることが多いです。低温期にしっかりと滋陰をされることが重要です。
血液検査でフェリチンの値を確認しましょう
基礎体温とあわせて確認していただきたいのが、フェリチンの値です。一般的な血液検査ではフェリチンは検査項目に入っていませんが、希望することで追加してもらえます。
栄養成分は、必要性という観点から大きく、2種類に分けることができます。
一つは、「全ての人に必要な」基本的な栄養素。3大栄養素と呼ばれる、糖質、たんぱく質、脂質、そして、2大栄養素と呼ばれる、ビタミンやミネラルなどの微量栄養素です。もう一つは、「一部の人には有効な」特殊な機能性を持つ成分です。よく、巷で話題になったり、一時的に流行したりする、さまざまな成分です。
5大栄養素は、どれ一つとしてなければ人間が生きていくことができない約50種類の栄養素です。当然、生殖機能を支える基礎となる栄養素であり、過不足が生じると、代謝障害となり、卵や受精卵の健全な成育が妨げられてしまうリスクが高まります。
一方、さまざまな機能性食品は、たとえ、なくても生命活動や生殖機能には何の支障も生じません。
まずは、基本的な栄養素のバランスを整えることを優先すべきですよね。
ほとんどの不妊患者さんは潜在的に鉄が不足しています。
よい卵を育むのに絶対に必要であるのにもかかわらず、現代に特有な食生活や生活習慣では不足しがちな栄養素の一つが「鉄」です。
通常、貧血の診断基準は赤血球中のヘモグロビンが使われますが、体内の鉄は赤血球だけでなく、組織鉄や貯蔵鉄としても存在します。ヘモグロビンが正常範囲であっても、貯蔵鉄が少ないということは組織中には鉄が十分な量ではないということになります。貯えに手を出さざるを得ないくらい少なくなっているということです。
貯蔵鉄であるフェリチンは、理想的には100~150ng/mlですが、最低でも50ng/mlは必要です。元気な赤ちゃんを産むための、フェリチン値の理想は100です。
アメリカでは、フェリチン不足(潜在的な鉄欠乏性貧血)では着床不全や早産、流産のリスクを高めると考えられており、「フェリチン値が40以下では妊娠してはいけない」と言われています。血液検査では、「正常範囲内に入っているかどうか」はもちろん重要ですが、漢方医は、血液のバランスでからだの栄養状態を見ます。
基礎体温表とフェリチンを含む血液検査結果があれば、多くのことが分かりますので、ご相談ください。