「低温期が長く高温期が短いタイプ」とは、卵胞が育つ低温期が20日以上と長引き、排卵後の高温期が12日未満と短くなりやすい基礎体温パターンです。不妊のご相談で比較的多く見られるタイプで、卵子の成熟に時間がかかり、排卵が遅れているサインと考えられます。漢方の葵堂薬局(大阪・堺/薬剤師 西岡敬三)が、東洋医学からの整え方を解説します。
この記事の要点
- 低温期の長さは「卵胞の成熟スピード」、高温期の短さは「排卵後を支える力」を映す
- 東洋医学では生殖の根本「腎」の弱り(腎虚)と血の不足が背景にあると考える
- 身体を温め「黒い食材」で腎を養う食養生が土台づくりの鍵
このタイプの見分け方チェックリスト
- 低温期が20日以上続くことが多い
- 高温期が9〜11日程度で終わってしまう
- 周期全体が35日以上になりがち
- 手足や下腹部の冷えを自覚している
- 経血量が少なめ、または色が薄い
陰陽五行から見た原因——「腎」と「血」の弱り
五行で「腎」は水に属し、生命力・生殖力の源(精)を蓄える臓と考えます。卵子を育てるエネルギーはこの腎の精から供給されるため、腎が弱ると卵胞の成熟がゆっくりになり、低温期が延びると捉えます。また排卵後の高温期を支えるのは腎の「陽気」(温める力)。陽気が不足すると体温を保ちきれず、高温期が短くなります。加えて卵胞を潤し育てる「血」が不足すると、この傾向はさらに強まります。
相談現場でよくある傾向
葵堂薬局のご相談では、このタイプの方に「若い頃からずっと冷え性」「夜更かしが続いている」「ダイエット経験が多い」という共通点がよく見られます。基礎体温表を拝見すると、低温期の体温そのものが36.0℃を下回る方も少なくありません。低温期が5日縮まるだけでも周期のリズムは大きく変わるため、焦って結果を求めるより、まず3ヶ月単位で「温める・補う」土台づくりをご提案しています。
このタイプの食養生——腎を補う「黒」と「温」
- 腎を養う黒い食材:黒豆・黒ごま・黒きくらげ・ひじき・クコの実
- 温める食材:生姜・シナモン・ねぎ・えび・羊肉・鶏肉
- 血を補う:レバー・赤身肉・ほうれん草・なつめ
- 控えたいもの:冷たい飲食物・生野菜中心の食事・夜更かし(腎を消耗します)
体質に合わせて検討される代表的な漢方薬
- 温経湯:冷えを伴う月経トラブルに広く用いられる、このタイプの代表的処方
- 当帰芍薬散:血を補い水の偏りを整える。冷え・むくみのある方に
- 八味地黄丸:腎の陽気を補う基本処方(体質により)
低温期の長さの背景は一人ひとり異なります。基礎体温表2〜3周期分を持って薬剤師にご相談ください。
よくある質問
Q. 低温期が長いのはなぜですか?
A. 多くの場合、卵胞の成熟に時間がかかり排卵が遅れているためです。東洋医学では腎の精と血の不足、身体を温める力の弱りが背景にあると考えます。
Q. 高温期が10日未満でも妊娠できますか?
A. 可能性はゼロではありませんが、高温期の短さは受精卵を支える環境が整いにくいサインとされます。気になる場合は婦人科での検査と並行して体質改善に取り組むのがおすすめです。
Q. 卵子の質は今から変えられますか?
A. 卵子の元となる一次卵胞は、排卵までにおよそ半年かけて育ちます。その間の栄養状態・血流・生活習慣は、卵胞が育つ環境を左右します。「質を上げる」と断言はできませんが、育つ土台を整える意味は大きいと考えています。
まとめ
このタイプは「温めて、補う」が合言葉。3ヶ月後の卵子のために、今日の食事と睡眠から畑を耕していきましょう。
基礎体温タイプ別ガイド|あなたのグラフはどのタイプ?
あなたの基礎体温表、一緒に読み解きませんか?
漢方の葵堂薬局では、基礎体温表をもとにした無料の漢方相談を全国から電話・オンラインで受け付けています。
フリーダイヤル 0120-789-301(完全予約制)
西岡より——「畑を耕す」という考え方
私はよく、妊活を畑づくりに例えてお話しします。作物を育てたことのない人が、普通の10倍も高い種を買って「さあ育てるぞ」と意気込んだとします。植える場所に選んだのは、廃校になった小学校の運動場。何度か芽は出ましたが枯れてしまい、何回植えてもうまくいきません。そこを通りかかったおじいさんが言いました。「こんな土の硬い、栄養のないところに植えても作物は育たないよ。植えるなら、しっかり耕して肥料をまいてからだ」。
人の身体も同じだと私は考えています。どんなに良い受精卵でも、迎える子宮が冷えて栄養が足りなければ、根を張ることは難しい。日本は体外受精の実施件数では世界有数ですが、出生率はそれに比例していません。最先端の医療はもちろん必要です。ただその前に、「妊娠しやすい身体づくり」が置き去りにされていないでしょうか。
忘れられない方がいます。43歳で体外受精中、採卵できた3個の卵子のうちランクの良い2個を戻しても妊娠に至らず、「残っているのは一番ランクの低い卵子だし、年齢も年齢だから」と、3回目を始める前から諦めておられました。私はこうお話ししました。「ランクは低いかもしれません。でもその卵子自体は、必死に生きようとしています。それを最初からダメだと決めつけるのはどうでしょう。『しっかり私が受け止めてあげるわ』と、前向きに迎えてあげませんか」。この方はその3回目で妊娠され、お子さんが小学生になった今も、お店の前で会うと挨拶を交わす仲です。もちろん、すべての方が同じ経過をたどるわけではありません。それでも、身体と心の畑を耕すことには意味がある——そう教えてくれた出会いでした。
妊活は結果が出るまで時間がかかるものです。焦るあまり、あれもこれもと頑張りすぎて、ご自身をすり減らしてしまう方をたくさん見てきました。どうか一人ですべてを抱え込まず、ご自身を一番に大切にしてください。
この記事の執筆・監修者
西岡 敬三(にしおか けいぞう)
漢方の葵堂薬局(大阪府堺市) 代表/薬剤師
1987年 京都薬科大学卒業
1987年 帝国化学産業株式会社入社:新薬の研究(論文:実験的胃粘膜傷害に対するBenexate・CDの作用)
1990年 帝国化学産業株式会社退社、漢方の修行へ
1998年 漢方の葵堂薬局を開局
2001年 有限会社漢方の葵堂薬局 設立
西洋医学にも精通した漢方専門薬剤師。「食べたもので身体ができている」をモットーに栄養学にも精通し、血液検査データの分析と漢方・中医学・食養生の視点から、一人ひとりの体質に合わせた養生と漢方相談を行っている。NLPマスタープラクティショナー認定。20年以上にわたり全国から不妊・二人目不妊の相談を受け、電話・オンラインでのカウンセリングにも対応。
著書:
『心もカラダもラクになる 血流の整えかた』
『病院では教えてくれない 西岡式妊活で妊娠まっしぐら』
※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、医学的な診断・治療に代わるものではありません。漢方薬は体質によって適否が異なるため、服用の際は必ず薬剤師にご相談ください。婦人科・不妊治療に通院中の方は主治医にもご相談のうえ併用をご検討ください。

