「基礎体温が標準タイプ」とは、低温期と高温期がきれいな二層に分かれ、周期にも大きな乱れがない状態のことです。一見理想的に見えますが、標準タイプでも妊娠に至らないご相談は少なくありません。この記事では、漢方の葵堂薬局(大阪・堺/薬剤師 西岡敬三)が、基礎体温だけでは見えない「隠れた原因」と、東洋医学からの整え方を解説します。
この記事の要点
- 基礎体温が正常でも、気・血の不足や巡りの滞りが妊娠しにくさの背景にあることがある
- 東洋医学では「妊娠しやすい身体=畑づくり」と考え、周期全体の底上げを行う
- 食養生と漢方で体質の土台を整えることが、標準タイプの妊活の近道になる
標準タイプの見分け方チェックリスト
- 低温期と高温期の二層にきれいに分かれている
- 高温期は12〜14日程度続いている
- 周期は25〜38日でほぼ安定している
- それでも半年〜1年以上妊娠に至っていない
- 病院の検査でも「特に異常なし」と言われた
3つ以上当てはまる方は、このタイプの可能性があります。
陰陽五行から見た「異常なしなのに授からない」理由
東洋医学では、妊娠には五臓のうち「腎」(生殖の力の源)・「肝」(血を蓄え巡らせる)・「脾」(気血を生み出す)の連携が欠かせないと考えます。基礎体温が整っていても、飲食から気血を生み出す脾の働きが弱ければ、子宮や卵巣に届く栄養・血流は不足しがちです。いわば「畑の形は整っているが、土の栄養がやや足りない」状態。検査数値に現れる前の、グラデーションの中にある体質の弱りです。
相談現場でよくある傾向
漢方の葵堂薬局のご相談では、標準タイプの方に「疲れやすい」「爪が割れやすい・髪が抜けやすい」「経血量が以前より減った」「手足の冷え」といった気血不足のサインが重なっているケースが目立ちます。また、血液検査を拝見すると、フェリチン(貯蔵鉄)やタンパク質の数値が妊娠に望ましい水準に届いていない方も多く、「異常なし」と「妊娠に十分」は必ずしも同じではないと実感しています。
また、食事内容を伺うと「朝は食べない、昼はパン1個、夜は普通に食べる」という方が本当に多いのですが、これでは一人分の栄養にも足りません。これからもう一人をお腹の中で育てていくのですから、「二人分の栄養がいる」と考えてみてください。生理痛についても「あって当たり前」と流さないでほしいのです。本来、整った身体では強い生理痛はないもの。小さなサインを一つずつ整えていくことが、標準タイプの底上げにつながります。
標準タイプの食養生
- 気血を補う:米・山芋・かぼちゃ・鶏肉・卵・なつめ・ほうれん草・黒ごま
- 鉄とタンパク質:赤身肉・レバー・あさり・小魚を意識的に
- 控えたいもの:冷たい飲み物・過度な糖質・朝食抜き
「食べたもので身体ができている」——まずは3食のタンパク質量から見直すのがおすすめです。
体質に合わせて検討される代表的な漢方薬
- 当帰芍薬散:血を補いながら水の巡りを整える。冷え・むくみを伴う方に
- 四物湯:血虚(血の不足)の基本処方
- 桂枝茯苓丸:巡りの滞り(瘀血)のサインがある方に
同じ標準タイプでも適する処方は一人ひとり異なります。自己判断ではなく、基礎体温表を持って薬剤師にご相談ください。
よくある質問
Q. 基礎体温がきれいな二層でも不妊になりますか?
A. あります。基礎体温はホルモン変動の一側面を映す指標であり、卵子の状態・栄養状態・血流などは反映しきれません。二層でも妊娠に至らない場合、体質面の底上げが検討課題になります。
Q. 病院で「異常なし」。漢方相談に意味はありますか?
A. 「異常なし」は病気ではないという意味で、妊娠に最適な状態とは限りません。東洋医学は検査値に出る前の弱りを体質として捉え、整えることを得意としています。
Q. 最初に何から始めるべきですか?
A. 基礎体温の記録を2〜3周期分そろえること、そして食事(特にタンパク質と鉄)の見直しです。そのうえで体質に合った漢方を検討すると効率的です。
まとめ
標準タイプは「あと一歩の土台づくり」で変わる可能性を持ったタイプです。基礎体温表と血液検査データを組み合わせれば、あなたの畑に足りないものが見えてきます。
基礎体温タイプ別ガイド|あなたのグラフはどのタイプ?
あなたの基礎体温表、一緒に読み解きませんか?
漢方の葵堂薬局では、基礎体温表をもとにした無料の漢方相談を全国から電話・オンラインで受け付けています。
フリーダイヤル 0120-789-301(完全予約制)
西岡より——「畑を耕す」という考え方
私はよく、妊活を畑づくりに例えてお話しします。作物を育てたことのない人が、普通の10倍も高い種を買って「さあ育てるぞ」と意気込んだとします。植える場所に選んだのは、廃校になった小学校の運動場。何度か芽は出ましたが枯れてしまい、何回植えてもうまくいきません。そこを通りかかったおじいさんが言いました。「こんな土の硬い、栄養のないところに植えても作物は育たないよ。植えるなら、しっかり耕して肥料をまいてからだ」。
人の身体も同じだと私は考えています。どんなに良い受精卵でも、迎える子宮が冷えて栄養が足りなければ、根を張ることは難しい。日本は体外受精の実施件数では世界有数ですが、出生率はそれに比例していません。最先端の医療はもちろん必要です。ただその前に、「妊娠しやすい身体づくり」が置き去りにされていないでしょうか。
忘れられない方がいます。43歳で体外受精中、採卵できた3個の卵子のうちランクの良い2個を戻しても妊娠に至らず、「残っているのは一番ランクの低い卵子だし、年齢も年齢だから」と、3回目を始める前から諦めておられました。私はこうお話ししました。「ランクは低いかもしれません。でもその卵子自体は、必死に生きようとしています。それを最初からダメだと決めつけるのはどうでしょう。『しっかり私が受け止めてあげるわ』と、前向きに迎えてあげませんか」。この方はその3回目で妊娠され、お子さんが小学生になった今も、お店の前で会うと挨拶を交わす仲です。もちろん、すべての方が同じ経過をたどるわけではありません。それでも、身体と心の畑を耕すことには意味がある——そう教えてくれた出会いでした。
妊活は結果が出るまで時間がかかるものです。焦るあまり、あれもこれもと頑張りすぎて、ご自身をすり減らしてしまう方をたくさん見てきました。どうか一人ですべてを抱え込まず、ご自身を一番に大切にしてください。
この記事の執筆・監修者
西岡 敬三(にしおか けいぞう)
漢方の葵堂薬局(大阪府堺市) 代表/薬剤師
1987年 京都薬科大学卒業
1987年 帝国化学産業株式会社入社:新薬の研究(論文:実験的胃粘膜傷害に対するBenexate・CDの作用)
1990年 帝国化学産業株式会社退社、漢方の修行へ
1998年 漢方の葵堂薬局を開局
2001年 有限会社漢方の葵堂薬局 設立
西洋医学にも精通した漢方専門薬剤師。「食べたもので身体ができている」をモットーに栄養学にも精通し、血液検査データの分析と漢方・中医学・食養生の視点から、一人ひとりの体質に合わせた養生と漢方相談を行っている。NLPマスタープラクティショナー認定。20年以上にわたり全国から不妊・二人目不妊の相談を受け、電話・オンラインでのカウンセリングにも対応。
著書:
『心もカラダもラクになる 血流の整えかた』
『病院では教えてくれない 西岡式妊活で妊娠まっしぐら』
※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、医学的な診断・治療に代わるものではありません。漢方薬は体質によって適否が異なるため、服用の際は必ず薬剤師にご相談ください。婦人科・不妊治療に通院中の方は主治医にもご相談のうえ併用をご検討ください。

